シュタイナート社製
光学式黒色プラスチック選別機について

プラスチックリサイクルの近況と黒色プラスチック

近年、プラスチックのリサイクルは進んできました。
しかしそのほとんどが、焼却するときに発生する熱エネルギーとして利用するサーマルリサイクルです。

2016年の使用済みプラスチックのうち、サーマルリサイクルとしてエネルギー回収されたプラスチックは57%を占めていました。

一方、リサイクルされなかったプラスチックが16%、原料として再生利用するマテリアルリサイクルされたプラスチックは23%でした。

出典:プラスチック循環利用協会 : プラスチックリサイクルの基礎知識より

マテリアルリサイクルで難しいのが黒色のプラスチックです。
プラスチックを選別する方法として近赤外線選別機があります。
しかし黒い色は近赤外線を吸収してしまうので近赤外線選別機で認識できず、選別することができません。

黒色のプラスチックは自動車のシュレッダーくず (ASR)に多く含まれます。
ASRはプラスチックを約30%含んでいますがマテリアルリサイクルされているのはわずか0.5%であり、改善の余地があります。

出典: 環境省 : 平成26年度自動車リサイクル制度の高度化・安定化方策等に係る検討・調査の結果について

弊社サナースでは環境・リサイクルにおいて先進国と呼ばれているドイツの、シュタイナート社製光学式黒色プラスチック選別機を2種類取り扱っているので紹介します。

2種類の光学式黒色プラスチック選別機の違い

光学式の黒色プラスチックを選別する製品は2つあります。ユニソートブラックとユニソートブラックアイです。
いずれも従来の近赤外線選別機を発展させた製品です。

ユニソートブラックは黒色プラスチックを検知することができる製品です。
プラスチックかどうかを認識しているわけではありません。
黒い物体の有無がわかります。

それに対してユニソートブラックアイは黒色プラスチックの材質がわかる製品です。
認識内容
ユニソートブラック 物体の有無
ユニソートブラックアイ 材質

第1表 黒色プラスチックの認識内容の違い

                                    

ユニソートブラック

写真1 ユニソートブラック

ユニソートブラックは黒色プラスチックを検知し選別することができる製品です。
但し対象物をプラスチックとして認識しているわけではありません。
黒色プラスチックを“材質は不明だが物体が存在している”と認識しています。
選別できる材料の大きさは15mm~200mmです。

構造

第1図 ユニソートブラック構造

ユニソートブラックは近赤外線カメラを搭載したセンサーユニットをベルトコンベアの前部上端に設置しています。
ベルトコンベアに投入された材料がコンベアから飛び出し、空中を飛んでいる瞬間にセンサーが認識をします。
黒色プラスチックを検知すると、製品下部に取り付けられたエアーバルブから圧縮空気を放出し材料を仕切り板の奥に飛ばします。

認識の仕方

ユニソートブラックは近赤外線選別機です
対象物の認識にはシュタイナート社の高精度のカメラ画像解析技術、ハイパースペクトルイメージング(HSI)を用いています。

黒でないプラスチックは材質別に認識でき、紙や木も認識できます。その機能に加え黒色プラスチックを材質不明の物体として検知できます。

例として透明のPE(ポリエチレン)フィルム、園芸用の黒のプラスチック鉢、灰色のPEボトルがどのようにユニソートブラックに認識されているか写真2と第2図に示します。

写真2 投入前材料

第2図 ユニソートブラックでの認識

黒でないPEフィルムとPEボトルはPEとしてプラスチックの材質が認識されています。
一方、黒のプラスチック鉢は材質が不明だが物体の存在が認識されています。

用途

繰り返しになるがユニソートブラックは通常の近赤外線選別機に黒色プラスチック選別機能が加わった製品です。

従来の近赤外線選別機では回収できない黒のプラスチックを回収することが可能です。
プラスチックの回収率を向上させることができ、その分、埋め立に回る量を減らすことが出来ます。

写真3 ユニソートブラックが回収した材料

また、ユニソートブラックは黒色プラスチックを異物として除去する使い方も出来ます。
例えば、ペットボトルのリサイクルの際に、黒の異物を取り除くために利用できます。

他には、黒でないPVCと黒の物体をまとめて除去することでRPF製造に利用できます。
     
                                                  

ユニソートブラックアイ

写真4 ユニソートブラックアイ

ユニソートブラックアイは、黒を含めたあらゆる色のプラスチックを材質別に認識し選別する事が可能です。
選別できる材料の大きさは 10mm~40mmです。

ユニソートブラックと同様に、シュタイナート社の高精度のカメラ画像解析技術、ハイパースペクトルイメージング(HSI)を用いて対象物を認識します。
但し、観測する周波数の範囲をユニソートブラックと変えることで黒色プラスチックの材質別の選別が可能になっています。

認識できるプラスチックの材質は四大汎用プラスチックといわれるポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)とポリスチレン(PS)です。

構造

第3図 ユニソートブラックアイ構造

ユニソートブラックアイもカメラを搭載したセンサーユニットをベルトコンベアの前部上端に設置しています。

材料がコンベアから飛び出し、空中を飛んでいる瞬間にセンサーが対象物の認識を行い製品上部に取り付けられたエアーバルブを用いて選別したい対象物を仕切り板の手前に打ち落とします。

用途

容器包装プラスチックなどに含まれる黒のPS,PP,PEの選別やPVCの除去に利用できます。
特に、比重が近いため比重による選別が困難なPPとPEの選別に利用できます。

写真5 ユニソートブラックアイが選別したPE

また黒のプラスチックを多く含むASRでプラスチックの材質毎の選別に利用できます。
なかでもASRに多く含まれるPPの選別です。
ASRのPPは充填材の含有量の違いにより、比重が0.9から1.1を超えるものまで幅広く、比重による選別が難しいからです。

おわりに

シュタイナート社によれば、ドイツでは使用済み容器包装には1%から5%の黒の材料が含まれています。
シュタイナート社は、この、わずか数%程度含まれている黒の材料を回収することを想定した製品の開発を行いました。
ドイツが環境やリサイクルの先進国と言われていることをあらためて認識させられます。

弊社が取り扱う黒色プラスチックの光学式選別機を二つ紹介させていただきました。
日本への導入はまだまだこれからですがこれらの製品がプラスチックのマテリアルリサイクルの一助になれば幸いです。

<シュタイナート社>
資源リサイクル・鉱物採掘の分野において金属・プラスチックを選別する様々な製品を開発。
世界50カ国以上で利用されています。2019年に設立130年を迎えるドイツの老舗企業。