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もっと知りたい!日本の林業:架線集材って何?

お知らせ
タワーヤーダー (KONRAD社製)による架線集材  

日本の面積の約7割を占める森林。かつては主要産業だった林業ですが、安価な外国産材の台頭により打撃を受け、1980年以降は縮小傾向にありました。

 

しかし、昨今の木材需要の逼迫による外国産材の高騰や、森林の多面的機能の再評価など、林業への期待が高まっています。SDGsへの取り組みが進み、サステナブルな社会への移行が必須となっている現在、林業が果たす役割は極めて大きいと言えます。

 

本シリーズでは、林業をより身近なものとして感じていただくために、日本の林業の歴史や現状、技術などについて解説していきます。

 

今回は、日本の伝統的な集材技術である「架線集材」の経緯と現状について、ご説明していきます。

 

架線集材とは?

「架線集材」とは、空中にワイヤーロープを張ってロープウェイのようなシステムを簡易的に作り、伐採した木を吊るして木材を安全に運び出し、一ヶ所に集めて搬出するための技術です。  
丸太を集材する搬器 KONRADY社製LIFTLINER rev1

日本の森林は、急峻で尾根や谷が入り組んだ複雑な地形が多く、こうした地域を中心に、架線集材の技術が発展してきた経緯があります。かつて架線集材は広く行われていましたが、林業用機械の充実化や林道整備に力が入れられてからは、あまり活用されなくなっていきます。

   

再注目される理由とは

近年、架線集材に再び注目が集まっています。

 

路網整備が進められてきたとはいえ、奥地林や急峻地まで道路や作業路を開設するのは非常に難しく、道路がなくても集材することができる「架線集材」が見直されてきているのです。作業道路を減らすことで、山を痛めないというメリットもあります。

 

また、一度システムを開設すれば、その後は流れ作業で効率的に集材できるのも、架線集材が注目されている理由の一つです。

様々な架線集材の方法

【従来型の架線集材】

日本で長年行われてきた従来型の架線集材は、「集材機」「搬器」とよばれる機械を使用します。

 

まずは「索張り」といって、ワイヤーロープを張っていく作業を行います。この「索張り」には様々な方式があり、熟練した技術も必要となってきますので、誰もができるというわけではありません。

 

「索張り」で作業システムができあがると、いよいよ集材です。「搬器」という滑車に、材木を吊るし、集材機でワイヤーロープを動かす(巻き取る)ことで木材を集積場に運びます。

 

【高性能林業機械を使用した架線集材】

従来型の架線集材は、一度の索張りで広範囲の集材が可能になるなど、優れている部分もありますが、架設・撤収に時間と労力がかかることに加え、技術者の不足・高齢化なども相まって、広がりにくいのが現状です。

 

そこで近年、高性能林業機械を使用した架線集材に注目が集まっています。ここでは、タワーヤーダとスイングヤーダを使った架線集材についてご説明します。

 
①タワーヤーダによる架線集材

タワーヤーダとは、集材ドラムやワイヤーロープを張るためのタワーが装備されている移動可能な集材機です。

 
KONRAD社製タワーヤーダー KMR4000U
 

架線の張り方も簡易で急傾斜地での作業に向いていることから、これからの日本の架線集材の中心的役割を担うことが期待されています。

 

欧州の最新型タワーヤーダは、従来型の集材機に比べ、架設作業にかかる時間が大幅に短縮でき、さらに人員削減効果による効率化が図られています。最低 2 名での集材作業が可能となる機種もあります。

 

また、リモコンによる無線遠隔操作が可能で、人と機械の接触を減らすことで安全性が 格段にアップしています。

タワーヤーダは、高性能搬器をセットで使用することが多く、こうした高性能搬器による効果もあり、かなりの効率化が図られています。

 

最新型タワーヤーダによる架線集材の様子は、こちらの動画をご覧ください。

 

②スイングヤーダによる架線集材

スイングヤーダは、建設用のマシーン(ショベルカー)に集材用ウィンチを取り付けて集材する機械で、アームをタワーとして使用します。   主索を用いない簡易な索張り方式での集材に対応しており、架設・撤去・移動が簡単というメリットがあります。現在は、リモコンでの操作が可能な機種が主流です。

上部が旋回するため、材を下ろす位置を調整することが可能です。

 

架線集材以外にも集積作業を行うことができ、アタッチメント部分を変えるとさらに幅広い用途に使用することができます。

 

架線集材の課題

架線集材を行うためには、索を張る技術や安全確保など、特殊な技術が必要です。また、地域、現場ごとに状況が異なり、その地域に詳しく臨機応変に対応できる技能者が必要となります。

 

しかし、技術の継承や技能者の育成は、なかなか進んでいないのが現状です。

高性能林業機械を使用すれば、人員や作業時間を短縮することが可能となりますが、主索を用いるタワーヤーダは、「林業架線作業主任者」の資格が必要となるなど、高いレベルの技能者が必要となります。

 

技術の継承を急ぎ、人材育成に力を入れることが急務です。

 

弊社では、タワーヤーダなどの高性能林業機械の導入(納品)時に、既に現場で機械を使いこなしている技術者が操作レクチャーする、「導入指導」などを積極的に行っています。
  こうした実務者同士の技術共有をサポートしつつ、今後は林業先進国であるオーストリアでのトレーニングや受講なども視野に入れた人材育成に尽力していきます。

サナースの林業機械